東京の喧騒から離れ、苫小牧という環境に飛び込んだ篠山美季さん。
「仕事の関わり合いだけではない“自分の居場所”を持ちたい」──そんな思いで苫小牧に移住した背景には、新しい人との出会い、そして自分自身の再発見もあった。
ここでは、移住を決めた理由や苫小牧での日常、この街がもたらした変化について聞いてみます。
Q なぜ苫小牧に移住してきたのですか?
コロナの前まではカナダに住んでたんですけど、コロナ禍になり、やっぱり国内にいないと自分の親に何かがあった時にすぐ会いに行けないっていう状況だったので、まずは日本に帰国しようっていうことを決めました。
その上で、居住地を東京と苫小牧どちらにするか悩んだのですが、家族の都合もあり苫小牧に住むことを決めました。当時、仕事がオンラインだったことも大きかったですね。

Q 今、住んでいる場所の決め手はなんでしたか?
犬を飼っていたことや在宅ワークが前提だったため、部屋数のある家/ペット可物件という条件が重要だったんですよね。そして、最初は賃貸じゃなくてリノベーションしたかったんで「買うか!」って家を購入するつもりで探してたんですけど、たまたま良い条件の物件が見つかったので、そこにしました。
最終的に、私のほぼ独断で決めましたね笑 ここより綺麗な物件はないと思ったので!

Q 移住されてから地域とのつながりは持てましたか?
私が住んでいる地域に一件のカフェがあるんですが、そこで提供されている朝食がずーっと気になっていたのに、なかなか行けなくて…。だって、知り合いもいないので、そこそこハードルが上がってしまうじゃないですか?子供を置いて 1人で行くわけにもいかないですし。
そう思っていた矢先、そこのお店でやっているイベントに顔を出したことがきっかけで行けるようになって。今では通い詰めるほど楽しい場所になりました笑
今ではすっかり知り合いも増え、地域との繋がりを持つことができています。
Q 住んでみて思う関東との違いは?
これまでは、外に出て人と関わり続ける生き方しかしてこなかったんですよね。ただ、まったく知らない土地に引っ越してきたとき、ふと気づいたんです。
「あれ?私、仕事以外で友達をつくったことがないかもしれない…」って。
東京にいた頃も仕事がとにかく好きで、友達はほとんど仕事つながりでした。その話をするのも楽しかったし、自然と人間関係は仕事中心になっていったんだと思います。
でも、仕事を抜きにしたとき、普通の人と何を話せばいいのか分からなくなってしまって。「何の共通点もない人と、どうやって会話してたっけ?」と、戸惑う自分がいるほど…。
そんな中で、苫小牧で表に出て人と関わる仕事をするようになり、本当にいろんな人と出会うようになったんです。そこで初めて、「苫小牧にはこんなに面白い人たちがいるんだ」と感じることができて、ようやくここが自分の居場所、ホームなんだと思えるようになったんです。そういう意味で苫小牧は、東京に居るときよりも人との関わり合い方が大きく変わったなと思います。

Q 移住して感じた苫小牧の良い所を教えてください
それこそ、行きつけのお店を作るようになってから「仕事じゃない人」と自然に関われるようになったんですよね。それが本当に嬉しくて。
一人になったときに「あ、今日ごはん食べに行きたいな」とか、仕事とか会食とか関係なく、プライベートな自分として行ける場所がある。それってすごくいいことだなって。
今振り返ると、ちょっと涙が出そうになるくらい、しんどかった時もあって。そんな中で、子育てのことを一緒に心配してくれる人たちがいて。これは本当に大きかったです。お店に少し行けない期間があっても「大丈夫?」「元気だった?」って普通に声をかけてくれて。行けば元気をもらえるし、また「ここに来ていいんだ」って思える。
苫小牧には、そんな場所が結構あるんですよ。そういう“居場所”が見つかっていなかったら、たぶん私は、すぐに地元に帰っていたと思います。笑
Q 苫小牧に移住して困ったことはありましたか?
正直に言うと、私はずっと大阪や東京近郊みたいな都市部に住んできた人間なので、そういう地域って「女性がやりたいことをやる」みたいなテーマに関しては、良くも悪くもすごく寛容な場所だなって思ってたんです。
でも苫小牧に来て、最初に関わることになった人たちが、ちょうどうちの母親くらいの世代の方が多くて。
その中で「女性なんだから、家のことちゃんとやらないと」とか、そういう言葉に出会う機会が、最初は結構あったんですよね。
正直、「うわ、きっついな…」って思いました。そもそも得意じゃないし、「あ、これはちょっと合わないかも」って感じることもあって。
移住して一番最初に戸惑ったのは、そういう価値観の違いだったかもしれません。
でも、そこから自分が一歩外に出て、いろんな人と関わるようになっていったら「あれ? 全然そんなことないじゃん」って思うようになったんです。実際に出会った人たちは、年齢に関係なく、自分のやりたいことを始めていて。新しいことに挑戦して、ちゃんと「自分の名前」で名刺を渡して生きている人たちばかりで。40代を過ぎてから「これ始めました」とか「今これやってるんです」っていうのが、ここでは全然特別じゃなくて。それが、なんだかすごく感動したんですよね。
都会だと、どこか「早く始めて、早く結果を出してなんぼ」みたいな空気があるけど、苫小牧は「今からでもいいんだ」「自分のタイミングで始めていいんだ」って、そう思わせてくれる街だなって。最初は価値観のギャップに戸惑ったけど、それを超えた先に、すごく懐の深い場所がある。そこに気づくまでが、正直いちばん大変だったかもしれません。

Q 最後に移住して良かったなと思う点を教えてください
私自身、移住してくる前は人からどう見られるか、いかにカッコよく生きているかを、ずっと意識し続けないといけないというか。
みっともないところや、泥臭い部分は見せちゃいけない。本当は努力してるのに、「努力してませんけど、できちゃいました」みたいな顔をしながら生きてきた部分があって。
でも苫小牧に来て、自分のままで勝負している人たちを見て、無理にカッコつけなくても、ありのままで受け入れてくれる人がいて、それでいいんだよって言ってくれる土壌が、ちゃんとここにはあるんだなって。失敗も、遠回りも、泥臭さも含めて、「まあ、そういうこともあるよね」って受け止めてくれる空気がある。それが、この街の一番の魅力なんだと思います。
移住してよかったなって思うのは、肩の力を抜いて、ようやく“自分のまま”で生きていい場所にたどり着けた気がするから。
苫小牧は、そんなふうに思わせてくれる街ですね。